統合失調症
統合失調症とは
統合失調症とは独語で「schizophrenie」といい、明治時代に精神分裂病と訳され使用されてきましたが、病態と病名が合致しておらず偏見を招く恐れがあるため、平成14年から日本精神神経学会により統合失調症に名称変更になり現在に至っています。
疫学
通常のケースでは人口の約1%すなわち100人に1人が発症するという決して稀ではない疾患です。ただし、家族、親戚に同病者がいると発症率が高くなることは認められています。このことは外国によっても変わらず先進国や発展途上国も同様の発症率を示しています。また、好発年齢は14歳ぐらいから30歳代に発症することがほとんどです。
成因
さて、統合失調症の病態の原因ですが、残念ながらまだ明確になっていないのが現状です。しかしいくつかの仮説が唱えられています。それは脳内の神経と神経を連絡し、情報を取り交わすためにある神経伝達物質(ドーパミンなど)のアンバランスから起こるというものやグルタミン受容体の異常などが考えられています。
症状
統合失調症の症状はいくつかの分類があります。
思考の障害
思考は一定の目的に向かって適合した概念を順次に想起しながら結びつけ判断、推理などを行い課題を分析していく重要な精神活動です。統合失調症では次の症状がみられます。
思路の障害
話のつながりが悪く(連合弛緩) これが高度になると支離滅裂な思考となる(滅裂思考)。さらに人格の崩壊が進行すると単語の羅列に過ぎない(言葉のサラダ)や、まったく新しい言葉を作る(言語新作)などがみられます。
思考内容の障害
思考内容の障害で最も重要なものは妄想である。通常、一時的な妄想やうつ病による了解ができる妄想とは区別され、他人から被害や攻撃を受けている。盗聴器などで監視されている。みんなが自分の悪口を言っている、などの被害関係妄想などが主体となっています。
知覚の障害
統合失調症の知覚障害でよく見られるものは幻聴であり、しかも他人の声(言語性幻聴)をとることが多く、その幻聴に反応して自分もしゃべること(会話性幻聴)があります。この状態を他者から見ると、ひとりごと(独語)や一人でにやにや笑っている(空笑)になって現れ、幻聴の存在を示唆するものとなります。また幻聴はテレパシーや頭の中に埋め込まれたコンピューターから、またテレビでも自分のことを知られ自分のことを言っているなどと訴えます。
感情(情動)の障害
統合失調症に見られる特殊な、しかし極めて重要な感情(情動)の障害として同一対象に対して愛と憎しみといった相反し矛盾する感情を同時に持つもの(両価性感情)や普通なら感情反応を引き起こすような刺激があるのに、感情が伴わず、喜怒哀楽の情や身体的苦痛に至るまで鈍感になる(感情鈍麻)。他人や周囲のことにほとんど関心を示さず感情的な反応を見せない(無関心)や自分の殻に閉じこもり、他人との交流を避けるようになる(自閉)などがあります。 他にも特徴的な症状は色々ありますが、ここでは大きなものを述べました。
治療
統合失調症の治療には大きく二つに分けられます。1つは薬物療法であり、もう一方は広義の生活療法です。しかもどちらか一方でよいのではなく、両方が適切に行われないと治療はうまくいきません。
薬物療法
この10数年で統合失調症の治療は大きく変わりました。以前の定型抗精神病薬に代わり、アカシジアや過鎮静などの副作用を減じた非定型抗精神病薬の開発と普及です。今は第一選択薬は非定型抗精神病薬になっています。商品名をあげるとリスペリドン、クエチアピン、オランザピン、ペロスピロン塩基酸、ブロナンセリン、アリピプラゾール、ブレクスピラゾール、ルラシドンなどです。しかし、注意点として、糖尿病の合併や家族歴のある人には禁忌あるいは慎重投与が必要になっています。
生活療法
ある程度病状が安定したら、社会心理的な治療が不可欠になってきます。一番の重要なことは自分が病気であること(病識)を認識し、薬物療法を主治医と相談しながら継続することです。あるデータでは退院後1年服薬しなかった場合、そのうち8割の人が再発するというものもあります。服薬の継続は再燃させないためにも大変重要なことであることを伝えなければなりません。というのは再発するたびに薬物の反応性が悪くなると言われ、病気が進行してしまうからです。 そのほか精神療法、作業療法、レクリエーション療法、社会生活技能訓練(Socisl Skills Training:SST)、デイケア、家族に対する心理教育(家族の患者への対応が再発と関係あるため)などを行っていくことが大切です。
最後に
統合失調症は発症から治療を受けるまでの期間が短ければ短いほど、治療成績が良いことが確認されています。症状が認められたら、是非早めの受診をお願いします。